霜月
2008-11-01


買い物に出るのが遅かった。夕闇が迫っていた。
空気が冷たく、叢の虫の声もすっかり弱くなった。

 「クエッ、クエッ、」
あれは白鳥の声だ。

 向うから歩いてきた男性と、その後から来た女性も「白鳥の声ですよね」と自転車から降りて三人で青い色が僅かに残っている空を見上げたが鳥の姿は見えない。
 鳴き声もやがて消えてしまった。

 「あら、eさん?」と名を呼ばれて改めて見たら女性は近所の人だった。
 「退屈しているからお出かけください」
 「ありがとう」
それではと訪問するほど親しい間柄ではないが嬉しい言葉だった。

 スーパーのドアが開くとほかッと暖かい。
店舗に暖房が入ったのだ。
 東京では今日木枯らし一号が吹いたとニュースがあった。
日がどんどん過ぎてゆく。早くも11月だ。

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